Dr.伊藤のひとりごと
なぜ、小児外科医に。パート2
(2003年12月9日)
MMちゃんは出生体重が約2500gの女の赤ちゃん。その日の夜すぐに緊急手術となった。手術に参加したのはT先輩とK助教授。新人医師のぼくは外から手術の見学。麻酔科の先生たちはばたばたと慌てながら全身麻酔をかけ、手術が開始された。赤ちゃんのおなかが開腹されてから私の目にはいったのは、約8mmのクニャクニャしたミミズのような飛び出した腸管でその細さにびっくりした。この子どもの最終診断は十二指腸閉鎖症ではなく輪状膵といってすい臓の先端が十二指腸を全周性に完全にとり囲んで十二指腸を閉鎖してしまう病気であった。二人の外科医はこの細い腸と腸(正確には十二指腸と十二指腸)をゆっくりと縫い始めたのである。彼らの額には汗がたくさん噴きだしていた。縫うことをわれわれの医学用語では縫合という。約20分でこの腸管の縫合が終了した。ついに今まで離れていた腸がつながった。ぼくはこの手術に感動した。これは産婦人科の学生実習で始めて出産に立会ったときの感動に似ていた。ぼくも将来この手術をやってみたいと思った。 つづく。