Dr.伊藤のひとりごと
白い巨塔 パート2
(2004年02月29日)
今やテレビドラマ白い巨塔の財前教授と里見助教授と言えば日本で実在するどこの教授や助教授よりもはるかに有名かもしれない。ついでなので、こんどは、里見助教授について書いてみよう。ドラマの中とは言え、実際、あれほど立派な医者は果たしているだろうか。もちろん理想としては最高の医者の姿である。しかし、実際に自分や家族を犠牲にしてまであそこまで正義を貫くことができる医者は果たして実際に存在するかは疑問である。もし、彼が実在するとすれば、大学の基礎医学で生きていくことは大丈夫かもしれないが、臨床の場で生きていくのは結構難しそうである。医学の世界も他の社会と同じで正直だけでは生きていけないと思う。どこかずるくないと最後はいい人(先生)で終わってしまう。出世することのできるひとは恐らく要領がよいか、ずば抜けて優秀な人間である。ぼくはそのどちらでもないのでやはり出世は無理そうである。開き直って、出世なんてしなくてよいのでいい人(先生)でいいと思うのも本当は少し寂しい気がする。やはり、世の男性はよく分らないが、小さいときから男の子だから泣くんじゃないとか、強くなければいけないとか、男たるものはこうあるべきと育てられてきたため出世欲が残っているのであろうか。しかし、現代では男は女らしく、女は男らしくなってきており、この考えは当てはまりそうにないようだ。
最近、ぼくも大学を離れて開業してから出世なるものと縁がなくなった。しかし、こんどは医療経営なる重大な問題がのしかかってきた。やはり、勤務医時代は経営や人を雇う苦労はなかったので、余計な心配はしなくてもよかった、今や、家族を守っていくのみではなく、職員にも責任を持たなければならず、違う責任も負わなければならなくなった。その意味でも里見先生のように正義感やたてまえだけでは生きていけなくなった。大学病院と開業医の生活はかなり違う。一番違うのは、医者が自分しかいないこと、すなわち休みも簡単に取れないし、自分が簡単には病気になれないことである。昨年、ある製薬会社からの依頼で「大学病院の先生から町の先生へ」という題で講演させていただいたが、この内容は後のひとり言で書いてみることにする。