Dr.伊藤のひとりごと
こどもの腹痛
(2004年05月24日)
NHK健康アドバイスで放映した内容です。
題名は急を要するこどもの腹痛。
NHK健康アドバイスです。
今日は「急を要するこどもの腹痛」について
県医師会の伊藤伸一さんに話を伺います。よろしくお願いいたします。
Q:まず、はじめにこどもが「おなかが痛い」と訴えたときにどのようなことに注意したらよろしいでしょうか?
A:こどもの腹痛は発熱、咳、鼻水といった症状とともに比較的多く見られる症状の一つです。
さて、こどもの腹痛ですが、おなかがいつもより張っているか、硬いか、下痢をして痛がっているのかを確認する必要があります。
皆様は自分のお子さんの通常のおなかの状態を知っていますか。
ぜひ、こどもが眠っているときにおなかにそっと手を当てて通常のお子さんのおなかの硬さや張り具合を覚えておいてください。また、おなかに耳を当てると腸のグルグルと動く音も聴くことができますので、通常のこどもの腸の音も聴いて知っておいて下さい。
それから、こどもの腹痛といってもその症状は年齢によって異なります。例えば赤ちゃんはおなかが痛いと言葉で訴えることができません。
Q:では、こどもの年齢別の腹痛の注意点について教えてください?
A:年齢別のこどもの腹痛の注意点を述べます。
言葉を話せない乳児いわゆる1歳以下の赤ちゃんの腹痛で気をつけなければならないことはいつもと違う泣き声をだしたり、急に不機嫌になったり、ミルクを飲めなかったり、おなかがいつもより張っていることです。
比較的ミルクが飲めて発熱や嘔吐がなく顔色も良い時は少し様子を見ても良いでしょう。赤ちゃんの腹痛は便秘が原因で起こることも多く、2~3日間ウンチが出ないでおなかが張っている場合はおなかを「の」の字にやさしくマッサージしたり、綿棒で肛門を刺激したり、あるいは浣腸したりしてウンチを出してあげれば機嫌が良くなったり泣かなくなると思います。
次に1歳から2歳の幼児の腹痛の注意点です。
いつもと違う泣き声を出したり、おなかを触られるのを嫌がったり、おなかが張ったり、元気がないことや顔色が悪いことに注意をしてください。
なぜ年齢を2歳で区切ったかの理由は2歳を過ぎると自分で「おなかが痛い」と言えるようになるからです。
2歳以上の腹痛での注意点ですが、
おなかが張る、からだをだるそうにする、階段を降りるのを嫌がる、からだを曲げて痛がりおなかをかばうなどの症状に注意をして下さい。これは後で述べる急性虫垂炎の症状として参考になります。
Q:こどもの急を要する腹痛にはどのような病気があるのですか?
A:代表的なのは次の3つの病気です。腸重積、そけいヘルニア嵌頓(かんとんとは腸が出っ放しになって戻れなくなることです)急性虫垂炎です。いずれも時として手術になることがある病気です。
では、それぞれの病気について説明します。
まず、腸重積ですが、これは一刻を争う病気です。腸管が腸管に入り込んで入り込んだ腸が血行障害で色が悪くなり放って置くと腸が壊死といって腐ってしまう可能性がある病気です。年齢は7-8ヶ月で太っちょの男の子に多くみられます。いつもと違う泣き方で機嫌が悪く、おなかが張っていて、ウンチにイチゴゼリーのような血の混じった便が出た場合はこの病気を疑ってすぐに病院を受診してください。24時間以上放置すると腸が腐って、手術で腸を切除しなければならないこともあります。
そけいヘルニア嵌頓についてお話します。そけいヘルニアはよく脱腸といわれる病気です。腸が出たり入ったりするそけいヘルニアはあまり心配しなくて良いのですが、出たまま戻らない場合や周囲が赤くなっている場合はそけいヘルニアのかんとんが疑われます。24時間以上放置すると腸重積と同じように腸を切らなければならないこともありますのですぐに病院を受診してください。
急性虫垂炎は盲腸の近くにある虫垂が炎症を起こして腹痛を起こす病気です。4-5歳以後に頻度が多くなります。初めは軽い吐き気や腹痛があり、典型的な例では右のお臍の横を痛がりますが、こどもの虫垂炎は必ずしもそうとは限りません。こどもの虫垂炎は急に悪化して虫垂が破れて穿孔性腹膜炎となることも多く、注意が必要です。体を曲げておなかを痛がり、ジャンプやケンケンができない場合はこの病気を疑い、早急に病院を受診してください。
Q:実際にお医者さんに診てもらうときは、どの様なことを伝えたらいいですか?
A:次のことを先生に伝えてください(図)。
いつから痛いのか。どこが痛いのか。痛みは続いているのか。他に症状はないのか。便は赤くないか。これらをぜひ伝えていただきたいと思います。